プロジェクト ジャーニー レポート
はじめに
Kubernetesは、コンテナ化されたクラウド ネイティブ アプリケーションを管理するための、フォールト トレラントで拡張可能なスケーラブルなプラットフォームです。これは、現存する最も広く使用されているコンテナ オーケストレーション プラットフォームです。
2014年にGoogleのエンジニアによって最初に作成され、2016年3月にCloud Native Computing Foundationの最初のホスト プロジェクトとなりました。Linuxに次いで世界で2番目に大きなオープンソース プロジェクトであり、Fortune 100企業の71%にとって主要なコンテナ オーケストレーション ツールです。今後、Kubernetesの採用が減速する兆候は見られません ー Gartnerの”The CTO’s Guide to Containers and Kubernetes”によると、2027年までにグローバル組織の90%以上がコンテナ化されたアプリケーションを本番環境で実行するようになります。
このプロジェクト ジャーニー レポートでは、KubernetesがCNCFの下で経験した目覚ましい成長の過程を紹介します。すべてのデータ ポイントを特定の入力に帰することはできませんが、成功した決定と行動を探し出すために、相関関係を文書化して調査することはできます。このレポートは、CNCFが発行する一連のプロジェクト ジャーニー レポートの一部です。
注:これらの統計は、CNCFがCNCFプロジェクト コミュニティと共同で構築したDevStats toolを使用して収集されました。”コントリビューター”とは、レビューを行ったり、コメントしたり、コミットしたり、PRやイシューを作成したりした人を意味します。
プロジェクト スナップショット
Joe Beda氏は、2014年6月6日にKubernetesへのfirst commitを行いました。Kubernetesは2016年3月10日にCNCFに参加し、2018年3月6日に卒業した最初のCNCFプロジェクトでした。CNCFに参加して以来、 Kubernetesコミュニティは次のような追加をしました:
Adobeは、開発者プラットフォームの中核部分としてKubernetesを頼っています。Kubernetesは、高品質のソフトウェアをお客様に提供することを成功させるために不可欠であり、その拡張性により、新しいテクノロジーに対応可能です。
Kubernetesは、アプリケーションのデプロイ、管理、スケーリングのための効率的でスケーラブルなマルチクラウド インフラストラクチャを提供し、新機能を迅速、確実、かつ安全にリリースできるようにします。開発チームは、基盤となるインフラストラクチャを心配することなく、革新的なソフトウェアの作成に集中できます。
Joseph Sandoval
Lead Principal Engineer at Adobe
コントリビューターの
多様性
1/6
Kubernetesは、主要なベンダーとエンドユーザーのコントリビューション コミュニティ間の健全な調整と共有されたビジョンのおかげで、速度と採用を向上させました。CNCFに参加して以来、Kubernetesは7,800以上の組織からのコントリビューションを集計してきました。
現在、Kubernetesに貢献している企業のトップ2はGoogleとRed Hatです。この2社は、2016年にプロジェクトがCNCFに参加する前は、コントリビューションの83%を占めていました。現在では、コントリビューションの46%を占めています。
すべてのコントリビューションに占める割合は減少していますが、これら2社からのコントリビューションの総数は増加しています。現在、コントリビューターには、Microsoft、Amazon、Intelなどの世界をリードするテクノロジー企業のほか、Meetup、Weaveworks、Mattermostなどの急成長中の中堅企業やスタートアップが含まれています。これは、プロジェクトの創設団体が多くの貢献をしている一方で、他の組織に、コントリビューションの増加、スチュワードシップの共有、コミュニティの成長を奨励している健全なダイナミクスを示しています。
2016年3月にCNCFに参加して以来、積極的に貢献している企業の数は731社から8,012社に増加し、996%増加しました。この増加は、参加した時には2,727人だった個々のコントリビューターが76,035人以上に増加し、2,688%増加したことに相当します。Kubernetesはまた、参加以来、独立したコントリビューターの健全な拡大を享受しています。
企業の規模や業態を超えた多様性
(エンドユーザー、ベンダー、ファウンデーション)
数字から見てみます
企業のコントリビューターの多様性と、ベンダー<ー>エンドユーザーからの入力の健全なバランスは、成長を促進し続け、ユーザーにKubernetesを選択する自信を与えます。
企業別Kubernetesコントリビューションの累積成長 Q2 2014 – Q2 2023
Kubernetesコントリビューションの企業別内訳 Q2 2014 – Q2 2023
コントリビュートしている企業数の累積成長 Q2 2014 – Q1 2023
コントリビューターの累積成長 Q2 2014 – Q2 2023
Kubernetesコミュニティは、プロジェクトを維持し、継続的に改善するために必要な作業を行うことにコミットしています。例えば、採用の増加に直面して、エンドユーザー組織からのサポートを受けた勤勉なコントリビューターは、プロジェクトがホストされたイメージを無料で提供し続けることができるようにするために、何年にもわたる努力をしてきました。Kubernetesは、ユーザーにサービスを提供するインフラストラクチャを実行する数少ないプロジェクトの1つです。各リリースをカットした後にコンテナ イメージを利用可能にすることは、プロジェクトの成功を形作るのに役立った重要なサービスであると考えています。効率的かつ安全に実現するために、懸命に取り組んでいます。
インフラの刷新は、私たちのコミュニティの強さとメンバーの決意を試しました。SIG間の調整は困難でしたが、Kubernetesの将来にとって何が最善かということに焦点を失ったことはありません。私は、困難な仕事をするために立ち上がった素晴らしい人々を誇りに思い、必要なリソースを寄付してくれた組織に感謝しています。
Adolfo García Veytia
Staff Open Source Engineer at Chainguard,
Kubernetes SIG Release Tech Lead, Kubernetes Maintainer
コントリビューターの
地理的多様性
2/6
上位コントリビューション企業の国
Kubernetesへの国別コントリビューターの割合 Q2 2014 – Q1 2023
オープンソース プロジェクトとして、Kubernetesがグローバルで多様な分散ユーザー ベースにサービスを提供することは重要です。私は、Kubernetesドキュメントを言語と記述システムにわたってローカライズすることに特別な注意を払っているドキュメント作成の取り組みに注力し、貢献し、共同議長を務めるという名誉と特権を持っています。現在、Kubernetesドキュメントは15の言語で利用でき、2019年の9つの言語から増加しています。
ローカライゼーションが重要なのは、採用の障壁を減らし、世界中のユーザーとコントリビューターに対するより良いサポートを可能にするからです。SIG Docsの下でローカライゼーション サブプロジェクトを公式に承認し、最近、Devanagariスクリプトを使用したドキュメントの最初のインスタンスであるヒンディー語ローカライゼーションを開始したことを非常に誇りに思います。興味深いことに、私たちが話している間に、より多くの言語がローンチの準備をしています。この作業は、Kubernetesを英語以外でもアクセスできるようにし、ユーザー ベースを増やし、多様性と包括性を擁護する情熱的なコントリビューターによって推進されてきました。
Natali Vlatko
SIG Docs Co-Chair for Kubernetes, Kubernetes Maintainer
開発速度
3/6
Kubernetesの月間速度 Q1 2014 – Q1 2023
CNCFに参加してからの速度指標に基づくと、Kubernetes内のアクティビティは、主に大規模ベンダーがプラットフォームを追加したことにより、堅調なペースで成長を続けるようです。
開発者の速度(私たちによって定義されています)を追跡する1つの方法は、コミット+PR+イシュー+作成者という単純な公式を使用することです。また、Kubernetesの歴史を通じたコントリビューターの累積数も確認します。どちらも、複数のベンダーとエンドユーザーによるKubernetesの公式が、健全で草の根的なサポートを生み出すことを示しています。
Kubernetesプル リクエスト、コード コミット、イシュー、作成者の増加 Q1 2014 – Q1 2023
教育・イベント・
スポンサーシップ
4/6
プロジェクトのコミュニティが教育、イベント、スポンサーシップに参加すればするほど、プロジェクトはより健全になる傾向があります。
教育
Kubernetesの教育およびトレーニング プログラムは、プロジェクトがCNCFに参加して以来増加しており、Kubernetesエコシステムの育成と成長を支援しています。例えば、CNCFはLinux Foundationと協力して、Kubernetesの基礎、Certified Kubernetes Administrator、Certified Service Providerプログラムなど、世界的に認知された多数のKubernetesトレーニングおよび認定プログラムを開始しています。
CNCFは、実世界の実践者の現在のニーズに対応するプログラムを提供するよう努めています。例えば、KubernetesとCloud Native Associate(KCNA)認定は、Kubernetesに焦点を当てたクラウドネイティブ エコシステム全体の候補者を教育します。また、今年の第3四半期に、CNCFはKubernetesとCloud Security Associate(KCSA)認定を導入して、クラウドネイティブ空間における熟練したセキュリティ プロフェッショナルの増大するニーズに対応します。これらのプログラムはどちらも、学生とプレプロフェッショナルを対象としています。
また、2017年7月、CNCFとLinux FoundationはedX.orgと協力して、無料のMassively Open Online Course(MOOC)”Introduction to Kubernetes”を発表しました。このレポートの時点で、300,613人が登録しており、159カ国から登録者がいます。
2022年を通じて、これらのプログラムへの登録者数は大幅に増加しました:
2022年1月、CNCFと開発者に焦点を当てたジョブ プラットフォームであるHoneypotは、画期的な映画”Kubernetes:The Documentary”を制作し、公開するために提携しました。Kubernetesの起源に関する2部構成のドキュメンタリーは、これまでに合計549KのYouTubeビューを獲得し、世界中から視聴者を集め続けています。
イベント
KubernetesイベントはプロジェクトがCNCFに参加して以来世界中で増加しています。以下は、注目すべき例のほんの一部です。
CNCFの旗艦イベントであるKubeCon + CloudNativeConは、北米と欧州で毎年開催されています。このカンファレンスには、Kubernetesとクラウドネイティブ コンピューティングを発展させるために、主要なオープンソースとクラウドネイティブ コミュニティの採用者と技術者が集まります。
世界中のKubernetesイベントに対する需要は継続的に増加しており、2018年に開始された毎年恒例のKubeCon + CloudNativeCon + Open Source Summit Chinaにつながっています。
CNCFのKubeDayイベントシリーズは、2022年12月に日本でスタートしました。KubeDayの地域イベントは、グローバル都市の国内外の専門家と採用者、開発者、実践者を結び付け、対面でのコラボレーションを促進し、豊かな教育体験を提供します。
また、Kubernetes Community Days (KCDs)は現在、世界19か国で開催されています。これらのローカルに定義されたイベントには、Kubernetesとクラウドネイティブのユーザーと技術者が集まり、学習、コラボレーション、ネットワーキングを行います。さらに、現在、世界中に150以上のKubernetesミートアップがあります。
収益
KubernetesがCNCFに参加して以来、KubeCon + CloudNativeConsのスポンサー組織と参加者の数は大幅に増加しました。スポンサーの収益は、すべてのCNCFイベントを引き受けます。
Kubernetesイベントからの利益はコミュニティに展開され、教育や認定、小規模なイベントやミートアップのスポンサーシップ、ドキュメント化の取り組みなど、さまざまなプログラムをサポートします。CNCFとそのメンバーは、過小評価されているグループがKubernetesイベントに参加できるように、イベント奨学金も後援しています。
総参加者
2022 KubeCon + CloudNativeCon North America Transparency Reportより
総参加者
2023 KubeCon + CloudNativeCon Europe Transparency Report (近日公開予定)より
長年にわたって、Kubernetesは、コンテナ オーケストレーションのすべての側面をカバーする、より包括的なソリューションへと着実に進化してきました。コミュニティの取り組みは、プロジェクトを本番環境に対応させ、初日から使いやすくするのに役立ち、外部のポイント ソリューションの必要性を減らしています。
例えば、WindowsとLinuxベースのアプリケーションに投資している組織であれば、ワークロードを管理するために別々のオーケストレーターを探す必要はありません。Kubernetesプロジェクトは、Windows HostProcessコンテナのGAサポートを有効にし、運用準備標準を定義し、開発者エクスペリエンスを向上させることで、Windowsサポートを前進させています。
同様に、Kubernetesはセキュリティを強化し、セキュアなソフトウェア サプライチェーンを可能にすることで、コードの一貫性、信頼性、安全性を保持しながらプロダクションに出荷できるようにしています。昨年だけでも、このプロジェクトは、アーティファクト署名、SLSA3標準への準拠、ガイドの強化、APIデータの整合性を保護するメカニズムの改善などの分野で献身的な取り組みを行ってきました。
Nikhita Raghunath
Staff Software Engineer at VMware,
CNCF TOC Member, Kubernetes Maintainer
マーケティングの成長と
プログラム
5/6
2016年にKubernetesがCNCFに参加したとき、私たちはプロジェクトの認識を広め、2つのコア原則を通じてコミュニティを拡大するために熱心に取り組んできました:
- 現実の問題を解決し、視聴者に対して誠実であること。
- バランスを維持し、興奮を生み出すために、ベンダーとエンドユーザーからのすべての情報に耳を傾けること。
2017年6月、CNCFはKubernetes.ioのデザインとコンテンツの促進を開始しました。その日からこのレポートの日までに、サイト トラフィックは180万から1050万以上の月間ページ ビューに増加しました。2018年、CNCFは@kubernetesio Twitterアカウントの管理を引き継ぎ、その後、フォロワーを302K以上に増やすのに役立ちました。
Kubernetes.io月間ページビュー Q2 2017 – Q1 2023
プロジェクト
ドキュメンテーション
6/6
クラウドネイティブ プロジェクトは、新しいユーザーを教育し、既存のユーザーが問題を解決するのを支援するための堅牢なドキュメントなしには存在できません。ドキュメントの変更が健全な速度で行われることは、プロジェクトのコミュニティの健全性を示す大きなシグナルです。
これまでに、さまざまな背景や動機を持つ6,700人以上のコントリビューターが、Kubernetesのドキュメントに追加をし、磨きをかけてきました。
注:Kubernetesのドキュメントは.mdファイルで作成されます。CNCFはDevStats toolを使用して、GitHubのKubernetesリポジトリ内のすべての関連する.mdファイルの統計を自動的に収集し、カウントします。
Kubernetes Projectドキュメンテーションへの参加の増加 Q1 2014 – Q1 2023
Kubernetesプロジェクトのドキュメント コミットの累積的な増加 Q1 2014 – Q1 2023
さいごに
CNCFは、最先端のソフトウェア開発とデプロイメント パターンを民主化し、誰もがテクノロジーにアクセスできるようにすることで、オープンソースでベンダー ニュートラルなプロジェクトのエコシステムを育成し、維持することにコミットしています。
このレポートが、CNCFがKubernetes、そのチーム、およびプロジェクトを使用し形成する個人や組織の多様なコミュニティの成長を促進し、維持する方法についての有用な概観になることを願っています。
この日本語レポートは、以下の文書の参考訳です。
Kubernetes Project Journey Report
日本語版翻訳協力:橋本修太